上京ふれあいネット カミング

「まちに生きるデザインの役割-GK京都」

最新レポート一覧

京都市上京区、相国寺の東側にGK京都はあります。
プロダクトからグラフィック、景観や空間に至るまで幅広いデザイン事業を展開する総合的な創造集団です。
一般的にデザイン会社や広告代理店の仕事は、建築家やファッションデザイナーのように、デザインした製品などにデザイナーの名前がでることはほぼありません。
ですが、GK京都が手掛けるものが、私たちの生活にとても身近であることに驚きを受け、今回取材させていただくに至りました。「これもGKさんだったのか!」と驚きを隠せません。
中でも、京都のまちづくりにおける環境デザイン、防災におけるデザインの部分に注目し、代表取締役 社長の榎本信之様にお話を伺いました。

・・・・・・・・・・・

■会社の略歴を教えてください。

GKグループは1952年に設立されました。
もともとは東京芸術大学の小池教授のもとに集まった学生たちが、「Group of Koike」からGKと名乗るようになりました。現在GKデザイングループは、 国内8社、 海外4社の計12社によって構成されています。20年目にGK京都が立ち上げられました。
プロダクトからグラフィック、景観や空間に至るまで幅広いデザイン事業を展開しています。京都ならではの顔の見える人間関係を重視しつつ、長期的につきあい、‘経営支援型デザインサービス’の提供をするという、デザイン経営が企業や町にとって必要であることを20年以上前より提唱しています。総合デザインと企画・制作・マネジメントで社会貢献を目指しています。

■たくさん手掛けられていると思いますが、いくつか代表作をご紹介いただけますか?

はい。では、京都に特化したものと、防災の面からご紹介します。


▲広告パネル付きバスシェルター(京都モデル)/エムシードゥコー株式会社/2010

バスの待ち時間や乗降時、また夜間でも安心して快適に利用でき、また、都市の歴史や風土を踏まえた質の高いデザインです。街路景観を形成する、美しく機能性に優れたバスの乗降空間を創出しています。


▲京都市観光案内サイン/株式会社空間創研/2012

▲街路サイン計画「御池シンボルロード事業」/京都市/2003

地下を走る地下鉄の整備にあわせた「御池通シンボルロード」としての再整備にあたり、安全性・機能性とともに、人が気持ちよく歩いて楽しめ、祇園祭や時代まつりの舞台にふさわしい場としてのデザインを行っています。こうして、都市の景観づくりに寄与しています。

▲京都信用金庫の地域密着型コラボレーション施設「QUESTION」/京都信用金庫/2020(協働:GK設計)

こちらは、コワーキングスペースと金融施設(京都信用金庫河原町支店)を備えた、地上8階~地下1階の大きな窓が象徴的な、開放感あふれる多目的コラボレーション施設「QUESTION」です。「御池通シンボルロード」の重要な辻(交差点)に位置しており、構想段階の2015年より参画しデザインしました。空間デザインに関するコンセプト、施設内外の総合的な意匠計画、インテリアデザイン、照明計画、ビル内の随所にみられる各種サインなどのデザインと意匠監修を担当しました。


▲京都市交通局利用促進ポスター「地下鉄に乗るっ」/京都市交通局/2013

京都市交通局「地下鉄・市営バス応援キャラクター」を活用した、京都市営地下鉄・バスの利用促進を目的としたプロジェクトです。2011年に地下鉄、市営バスの増客を目指し、公募職員で立ち上げたチームで生み出されたPRキャラクターに、2013年GK京都のデザイン性、訴求力のある高いブランド力が加わり、細かいキャラ設定を行ったデザイン性のあるキャラクターをイラストレーターとともに制作しました。


左)津波避難ピクトグラムを用いた警告標識/三重県/2004(協業:NPO法人 防災デザイン研究会)
右)津波避難訓練アプリ「逃げトレ」/京都大学防災研究所、逃げトレ開発チーム/2018

さらに、こちらは弊社メンバーが参画している防災デザイン研究会の「津波避難ピクトグラムを用いた警告標識」(三重県)と津波避難訓練アプリ「逃げトレ」です。

津波ピクトグラムは美術教科書に掲載されたことでも話題となりました。ISO(国際標準化機構)図記号の原型となったデザインです。
防災デザイン研究会は、1996年より防災の研究者や専門家とデザイナーの協業で、防災ピクトグラムの収集と開発をはじめ、避難誘導標識システム・ハザードマップ・避難訓練・防災啓発コンテンツ・防災研究ウェブサイトなどの研究開発やプロジェクトに参画し、行政機関、研究機関、教育機関、民間企業などへ提案を行ってきました。 2005年に全戸配布された京都市防災マップのデザインも手掛けました。
2018年には、将来の南海トラフ巨大地震・津波被害などを念頭においた、最も効果的な人的被害軽減のための方策として、住民の避難対策に焦点を当てた避難訓練アプリの開発をおこない、グッドデザイン賞2018で金賞を受賞しました。

■これらの町の景観や防災に対して、大切にしていることは何ですか?


景観デザインは、これまではどこの地域でも標準化=スタンダード化することが主流でしたが、地域それぞれにあったデザインを提供することに変わってきています。つまり、ローカライズ化されています。「誰にとってもわかるもの。合わせて、その地域ならではのもの。」そこを大切にしています。
また、「サインは生ものである。」そのように考えています。環境や時代とともに風化もします。専門のデザイナーがいなければできないのではなく、地域に暮らす人、かかわる人たちの手で常に最善の状態でなければなりません。自分で首を絞めることになるのですが…笑
さらに、人材面においても、デザインマネージメントができる人材を育てています。

■GK京都の今後の展望を教えてください。


▲ユニビークル自主研究プロジェクトとともに。

デザインという概念が変化し、広がりをみせつつあります。
色や形といった小さい意味のデザインではなく、もっと広い視野で捉えた、人や自然をも考えたデザインが役に立つ時代がきており、それを担うのがGK京都の役割であり、体現していく時だと感じています。
これまでデザインは、色や形に落とし込むという自前的でただ才能を活かすものでした。ですが、それだけでは広がりを見せません。他の能力を持つ企業や人とつながっていく、連携をすることも必要です。そのようなクリエイティブ・ハブとして、ネットワークも生かし、より魅力的な色、形に落としていくことが大事だと考えます。総合的なデザイン支援で社会課題を解決していきたいです。


▲自社に展示されている電動アシスト自転車や京都の伝統工芸を結集した水上オートバイ

■そういった展望を実現するために取組まれていることはありますか?

ネットワークを生み出す交流スペースとして、3階をリノベーションしました。
創造性を高めるため、既存の素材をいかしたシンプルな構造になっています。セミナーやパーティなどができるような設備もそろえています。

コロナ禍で思うような展開はできておりませんが、先日はこの会場でウェビナーを行いました。

▲リノベーションされた3階交流スペース。

また、一般企業にはよくあると思いますが、デザイン会社では比較的珍しいプレス発表を行い、発信に努めています。

こちらはバトラーカーといいます。英語でバトラー=執事です。低速小型EV「ミニマム移動促進モビリティー(ミニマムモビリティー)」で、様々な人の移動のニーズにこたえられるように開発されました。バトラーカーの開発を主導したのは欧州に本拠を置くコンサルティング会社ローランド・ベルガーの社内ベンチャーカンパニーで、開発にはGK京都を含む計10社や大学の研究室が協力しました。


チームが重視したのは、すでにある技術を活用し、社会に新たな価値を素早く生み出すことでした。改良が必要な部分もあるのですが、技術開発には費用も時間もかかる中、すでに持つ技術を組み合わせることで、ユニークなものができたと思います。

背景には、地方在住の高齢者など、今まさに移動に困難を感じている人を助けたいという考えがあります。課題はありますが、まずは私有地内で社会実験をしていきたいと考えています。大企業には手が出しにくい「この町仕様に」を大切に、上京区のまちでもいつか実用化していきたいです。

はじめてのことが多いので失敗もありますが、恐れずチャレンジしていきたいです。

■最後に、上京区のまちへメッセージをお願いします。


ここ上京区は、御所があり、寺社仏閣があり、鴨川もあり、ポテンシャルがとても高いまちだと感じます。

住んでいる人にとって一番いいもの、住んでいる人にとって役に立つもの、それはつまり自分たちの地域に誇りを持てるということだと思います。誇りを持てるこのまちに、お客様を呼びたい、来られた方におもてなしをしたい、そう感じるはずです。


景観もまちも、ずっとかわらず保ち続けることは難しいと思います。新しい考えや技術を入れていかなければなりません。「住んでよし・訪れてよし」と、実感できるように、地域の良さを取り入れたデザインで貢献していきたい、そのようなまちづくりのお手伝いができれば、と思います。

ありがとうございました。

レポーター

岡元麻有(ギャラリーbe京都館長)

発見がとても多い取材となりました。読んでいただいた方も「これもGKさんだったのか」と、思われたのではないでしょうか。ひとつのデザインが地域社会に影響を与える、そんなまちに生きる力を感じました。

ページの先頭へ
facebook
リンクページ
上京区役所 上京のまち歩きマップ 上京区140周年記念 特設サイト 上京区の市立小中学校一覧 西陣の朝市 にしZINE