フリーフリーマーケット:自由+無料=省エネ+創造+出会い+α
最近はフリマことフリーマーケットもさほど珍しくはなくなりました。要らないものをただゴミにするのではなく、必要な人に再利用してもらおうという考え方は、確実に根ざし始めたように思えます。
しかし、1月の25、26日に室町学区で行われたフリーマーケットは、普通のフリマとはひと味もふた味も違うものでした。もともとフリーマーケットの“Flea”は「ノミ(蚤)」という意味で文字通り「蚤の市」ということです。ところが今回そこにもう一つの「フリー」“Free(無料)”が加わっています。つまり、普通のフリマの場合、格安とはいえ金銭とモノを交換しますが、今回はなんと「無料」、タダで好きなだけお持ち帰り可能、という設定なのです。まさにキャッチコピー通り「捨てる神あれば拾う神あり」。貨幣経済に挑戦(?!)するイベントだったわけです。
【「捨てる神」と「拾う神」が集う】
これを計画したのは、有限会社ひのでやエコライフ研究所の大関はるかさん。大関さんはすでに何回かこうしたフリーマーケットを開催していますが、地域や場所、期間を変え、さまざまな工夫を凝らしながら続けてきました。そして今回、室町学区で地域の活性化を兼ねるイベントとして行うことになったのです。
会場は3ヶ所に分けられました。まず、ふだんは人形劇などのパフォーマンスを上演する『あとりえミノムシ』(子ども服限定)、地域の集会所のような役割を持つソーシャルカフェである『ソーシャル・キッチン』、そして染色会社『HINAYA』のショウルーム、です。
『捨てる神』は、それぞれ会場に不要な物を持ち込みます。そして自分自身で色別に見やすく並べます。そして『拾う神』は、会場に足を運び、あれこれ選んだ上で持ち帰るのです。
イベント前日の夜、ソーシャル・キッチンにでの『捨てる神』の集まり具合を見に行ってみました。部屋の四方にラックが設置され、早くも何点もの服がかかっていました。面白いのは種類別ではなく「色別」に整理されているところ。壁中が綺麗な色のグラデーションのように見え、何だか気分がウキウキしてきます。種類で並べてしまうと手間もかかるし、逆に色が雑多に混じって視覚的効果を損なってしまうのだそうです。なるほどと思いました。
▲色別に揃えられた服。
【ここだけのモノとキモチの流れ方!】
試着スペースも一応用意されています。とにかく次から次へと人もモノもやってくることが予想されるので、果たして試着の余裕があるのか?いえ大丈夫、『鏡役』(ボランティア・スタッフ)が代わりに着てくれることもあるそうで…。
確かに当日行ってみると、『鏡役』は八面六臂の大活躍でした。服の間を巡りつつ、『拾う神』の「これどうかしら?」にアドバイスを与え、「どんな組み合わせがいい?」と聞けば、自分がマネキンとなってコーディネーションの実験台になる。目の回るような忙しさ!そうしている間にも次々と『捨てる神』がモノを運び込むのですから。
▲『拾う神』はマイバッグ持参です。
ここでは、お金のやりとりがない代わりに、必ず「似合うよ」「いいね!」という声かけをします。これが「取引成立」のサインというわけです。そして包装も無し。『拾う神』はマイバッグ持参が原則となっています。動くのは『人』と『気持ち』だけ!それだけでとても催しが盛り上がっていました。
▲後ろの壁にあるとおり『いいな』と『いいね』がここの『通貨』です。
【リサイクル・アレンジへの後押しイベント!】
また今回は、「『押忍!手芸部』によるWORK SHOP」というイベントも並行して行われました。このマーケットの主題は「いろいろな形のリサイクル」です。ですから、どの会場でも隅っこを見ると『リサイクル用』のコーナーがつくってあり、「そのままの状態ではちょっと着られそうにないけれど、+αでいろいろ楽しめそう」な服や素材が集められていました。こういった素材をアレンジして前よりもっと楽しめるものにしようというわけです。
そして講師として、この道の達人である石澤彰一さんをお招きし、いろいろな素材を自由に使って人形をつくるという形で「子ども向け」「(自称)大人向け」のワークショップが行われました。
【ゴミにしないということ】
HINAYAの会場には同様な手法で今まであちこちで作られてきた人形もたくさん飾ってありました。元の素材が簡単にわかるものもあれば、何をどうやったらこんなふうになるんだろう、というものまで。それはそれはユニークなものばかり、服を見るよりもつい気をとられてしまいそうでした。
▲再生された人形たち
フリマというと、なんとなく比較的若い人たちの催しと思われがちですが、各会場を次々にめぐっていると、道端ですれ違った『捨てる神』、会場に集まる『拾う神』にも、性別年齢を問わずいろいろな方々を見かけました。
こうやって、少し前の時代だったら「ゴミ」になっていたかもしれないものから、いろいろな人たちの関心や好奇心、創造心や行動を導き出すことができるのです。とても意外で楽しい発見のあったイベントでした。
レポーター紹介
大手 理絵
生まれも育ちも東京ですが、国内外をうろついたあげく、京都に落ち着き十年目。
特技と趣味は両方「野次馬」あちらこちらに出没中。