(出典:雑誌「ミセス」No. 697. Jan. 2013. 新年特大号pp.250-251.文化出版社)
取材後記
髙家さんは、とても明るくて話しやすい方だ。取材の間もずっと優しく微笑んでいた。職人としてまだ若い髙家さんは、様々な挑戦と出会い、色々な難題を乗り越えつつ和菓子作りの道に励んでいる。髙家さんは、試行錯誤の繰り返しだが、平常心があればどんな過程でも楽しめると言う。失敗を怖れず、平常心と前向きな姿勢を持つからこそ、十年間の修業を通し、技を身につけ、上品な味と豊かな食感のある和菓子が作れるのではないか。自分も髙家さんのように平常心を持ち、一生懸命に仕事をする人になりたい。
注釈
※1.6月30日の「夏越の祓(なごしのはらえ)」には、一年の前半の穢(けが)れをはらう「茅の輪(ちのわ)くぐり」や人形を流して身を清める行事が神社で行われるが、この日、水無月という氷に見立てた三角のういろうにあずきを散りばめた厄除けの菓子が売られる。
※2.「佛大通信」Vol.518(平成20年11月号)より「職人さんに会いたくて~髙家裕典×所めぐみ~対談:美味しさの秘密は職人の心意気」
付録:髙家さんの他の作品
「波の華」
波の華という言葉を聴いた瞬間、頭の中にどんなイメージが浮かぶだろう。筆者は青い波を想像した。しかし、店に並ぶ「波の華」という和菓子からは違った印象を受ける。「波の華」は黒砂糖入りのくずの生地で餡を包んであり、その上に、お米でできた氷餅の白い粉末がかけてある。夜の黒い波と白く見える汐を表現している。普通の涼しげな波のイメージとは違い、「波の華」は漆黒の静けさがある。髙家さんがお客さんに伝えたい特別な夏のイメージだ。
「無常」
この和菓子は、「家庭画報」の企画で、三十六歌仙の歌をテーマに作ったものだ。和菓子「無常」が表すのは小野小町の「あるはなく なきは数そふ 世の中に 哀れいづれの 日まで嘆かむ (生きている人は亡くなり、亡くなった人の数が増えてゆくばかりの現世に、ああいつまで私は生きていようとするのか)」という和歌である。合掌の形をした道明寺製和菓子だ。手を合わせる動作で嘆きを表現する。合掌は、「南無阿弥陀仏」という亡くなった人への手向けを意味するのと同時に、生きている人への願いも込められているのだろう。(出典:「家庭画報」第52巻 2009年5月号p.109. 世界文化社)
■御菓子司 聚洸(じゅこう)■
〒602-0091上京区大宮寺之内上ル
☎075-431-2800(三日前までに要予約)
営業時間:10:00~17:00 (定休:水曜、日曜、祝日)
アクセス:市バス「天神公演前」より徒歩約5分
レポーター紹介
姚詩遠(やお しおん)
大学卒業と大学院進学の間の夏休みに、大好きな町の京都に留学することを選びました。現在、同志社大学校内にある京都アメリカ大学コンソーシアム(KCJS)に在学中。大学で都市計画を専攻し、今秋からペンシルベニア大に進学し都市デザインを専門に勉強します。地域再生やまちづくりにも関心がありますが、個々の人々のあり方にも深い興味を持っています。日本の伝統と職人さんたちのことを尊敬しています。和菓子が大好きなので、今回聚洸さんを取材させていただきました。
▲取材チームの藤原優佳さん(左上)、林将城(右上)さん、芳武明日香さん(左下)と筆者(右下)
謝辞:同志社大学政策学部岡田彩先生、三宅敬子さん、KCJS中村伊都子先生(中村先生と筆者を除き、全員同志社大学に所属)