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未来を考えるために、過去を学ぼう! ~「西陣・町ミュージアム構想」を古武博司さんに聞く~

 

 

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▲古武さんは御年70才とは思えないほど、エネルギッシュに活動しておられます。

 

 京都で大学生活を送る中で、西陣という言葉を耳にする機会が何回かありました。西陣織などは聞いたことはありましたが、西陣という町については何も知らず、かつて織物産業で栄えていたということくらいしか知りませんでした。「今の西陣はどうなっているのか」ということに関心があり、今後どうなっていくのかということが気になり、西陣で活動されている古武博司さんを訪ねました。

 

 古武さんは「西陣の町家・古武」と名付けられた町家を拠点に、様々な文化活動や講演に取り組まれている方です。西陣だけでなく、京都の歴史について造詣が深い古武さんから、京都の歴史から西陣がどのように成り立ったのかということを紐解き、これからの展望を伺いました。

 

【京都と西陣の歴史を聞く】

京都は都が成立し発展してゆく過程で、天皇家と貴族や匠、文化人の集まる上京と、商いに長けた人が集まる下京に分かれ、二極化して発展してきたそうです。

上京では平安京が置かれ、一条大路(通)以北は王家・貴族別荘地として栄え、多くの離宮が営まれます。武士が台頭してくるようになると、それら離宮が寺社仏閣として姿を現すようになりました。源氏物語をはじめとする歴史的な書物からも伺えるような貴族の暮らしが広く営まれ、都の情勢の変化によって上京の姿も変わっていったというわけです。

 

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▲京都の町の成り立ちを説明される古武さん。

 

応仁の乱後、上京にあった西の本陣が置かれた場所で機織りが行われました。その織物が優れたものとして幕府からの保護を受け、西陣織として今日まで伝えられてきたのだそうです。西陣では産業と暮らしが密接に結びついていたということです。

 

【上京の魅力を聞く】

あらためて、上京や西陣の魅力とは何か古武さんにお話を伺いました。827 km²である京都市の中で、上京は7 km²しかありません。ですが、古武さんは「上京は京都の魅力そのものだ」とおっしゃいます。

 上京は1220年もの間、ずっと都であり続けたこと、表・裏・武者小路の三千家茶道お家元をはじめとした文化と、それを支えた陶芸・塗等の優れた匠達が織の名工と共に集住してきた地であるということ、旧洛中(上京・中京・下京)にある寺社仏閣589のうち228は上京にあるということ、大きな戦禍を免れており、歴史的なものが多く残っているということ。古武さんは上京の魅力をいくつも取り上げ、「上京は、伝統的な産業を軸に発展した地であり、天皇や藤原貴族の離宮、寺社が集まる高い文化の発信地でもありました。そしてそこは、誰もが知っていると言ってよいほどの歴史的現場である固有的価値を持ち、しかも、1200年間とだえることのない文化的価値が詰まっているのです。」と語られました。また、外国及び国内の人が持つ京都のイメージのすべてが、上京にその根元があるそうです。

 

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▲地図、模型、年表など様々な資料を用いて京都・西陣・町家の歴史を説明してくださいました。説明には16年間の蓄積が込められているそうです。

 

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▲古武さんお手製の町家の模型。描かれている商いの様子は洛中洛外図屏風を参考にされました。

 

【「西陣・町ミュージアム構想」と発信の工夫】

上京や西陣では、産業が観光などに盛んに活用されているわけではないそうです。そういった現状をふまえ、「ものをつくっているところを見せることで価値を高める必要がある」と古武さんは話されていました。

上京に1200年以上伝わっているものづくりとしてのエリアをみせる観光として、「西陣・町ミュージアム構想」というものを古武さんは考えておられます。エリアのミュージアムということで、上京にある1200年の歴史を掘り起こして発信し、産業を再生させようというアイディアです。

 

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▲「西陣・町ミュージアム構想」と、その他ご活動の数々

 

たとえば、町家の住居部分を奥へ 織っているところを前へ持ってくるということが産業の生業を見せるということにもつながります。こうした歴史と観光をミックスさせた取組を通じて、西陣や上京区を再生することが古武さんの目標だと話されていました。

 

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▲古武さんの熱を帯びたお話は、アジアにまで広がっていきました。

 

 歴史を掘り起こして発信することは誰にでもできると古武さんは語られました。自分の家の周りの歴史を調べて発信することも、立派な歴史の掘り起しと発信になります。また体験者の口から語られる歴史には、本や碑からは得られない迫力が込められているそうです。語り部がいないとこういった迫力のある歴史を発信することはできません。こうした身近な歴史や迫力のある歴史について、草の根レベルでの掘り起しと発信が広がっていくことで、エリアのミュージアムへの展望が開けるのではないかと思いました。

 

【過去・現在・未来の捉え方とは】

 西陣の現状には産業構造の変化が大きく影響しており、かつてのように栄えることは難しいのではないかと思っていましたが、西陣にどのような歴史があり、産業と暮らしがどう位置付けられていたかといったことを知らずに、考えることをやめていたという自分の姿勢に気づかされました。

 

 歴史を知ることで、今見えている以上のものを捉えることができるようになります。ですが、歴史を知っているだけではダメだと古武さんはおっしゃいます。歴史から教訓を抽出し、将来に活かせるようにならなければならないというのです。

 

「教訓をどうやって抽出して活用していくのかということを考えるためには、過去と現在、そして未来を一体のものとして捉える視点が重要なのです。」

と、古武さんは力をこめて語られました。

 

上京に眠る歴史を発掘し、発信し続けていくことで、そこから教訓を抽出し、学び取れる人を生み出すことができるかもしれません。発信する情報が増えれば、それだけ教訓が生かされる可能性が高まっていくのではないでしょうか。

 

 私自身も古武さんのお話を聞き、問題がある現状を分析するだけでなく、過去と今、未来を一体として捉え、その中で何が問題となり、どう解決していかなければならないのかということを、考えていけるようになりたいと思いました。このような視点をくださった古武さんに心から感謝します。

 

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▲お話のあと、古武さんとマチレポのお二人で。

 

レポーター紹介

 

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宮川拓海(みやがわ たくみ)

 

京都府立大学大学院公共政策学研究科に所属し、街の景観問題も含めた環境問題における協働の研究をしています。

好きなドラマで京町家を観たことをきっかけに、京町家に興味を持ちました。

京町家のつくりはもちろん、実際に京町家で生活をしている方々が受け継いでいる文化や考え方に関心があり、それらをどうやって守り発信していくかということを調べています。

これからも町家で暮らす方々、町家の保全に関わる方々、保全の現場を通じて勉強していきたいと思っています。

 

王雯薈(オウ ブンワイ)

中国・洛陽の出身で、上海理工大学を卒業してから日本の京都市に留学。現在、京都府立大学大学院・公共政策研究科で古い建築物の保存について学んでいます。故郷の洛陽において、都市開発やビルの建設により、多くの古い建築物が取り壊されていた状況に対して、その解決方法を探そうと考えていました。その問題関心を契機として、古い都市である京都に着目し、そこに留学が決定しました。特に京都では百年以上の歴史を持つ古い町家が今でも上手く保存されていることに興味を持っています。その保護と活用の取り組みについてフィールドワークによって研究中です。

 

*王さんの感想です。

 

京都の町家は魅力的で貴重な資源として、その存在は文字より強いインパクトをもっています。時間の流れ、歴史の変遷により洗練されてきた各々の町家は、自分の物語を人々に伝えていくように存在しています。古武さんは、京町家の魅力を伝えるメッセンジャーとして京町家の文化、歴史の変遷を語っています。古武さんによる手作りの町家の模型を見せてもらいながらお話を聞くことで、その時代、政策などの制度の変化によって、伝統的な町家と現在の職住一体の町家の姿が如何にして現在の形に変わってきたかが、理解しやすくなりました。

戦争、地震、火災といった様々な困難を経験した町家がしっかりと残されていますが、現代社会において、如何にして次の時代にそれらを保存していくか。近代化は町家の最大の敵のような存在となっています。一部の町家は改修され活用されていますが、その一方で、多くの放置された町家の未来は最も大事な問題点になっています。古い町家の価値を人々に知らせるために、まず歴史からだという取り組みはその解決方法の一つであると感じています。


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