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1針1針に心をこめた、繊細で奥深い京繍のわざ ~中村刺繍さんをたずねて~

 

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▲1本1本丁寧に繍われる京繍

 

着物や帯や小物などの装飾として身近な刺繍。京都には、手作業で1本1本丁寧に繍われる「京繍」という京都独特の刺繍があるのをご存じだろうか?今回は、昭和の初め頃に創業され、伝統的な京繍を継承されている中村刺繍の中村彩園さんと後藤美鈴さんに、繊細で奥深い京繍のお話をお聞きしました。

 

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▲姉妹だという中村彩園(左)さんと後藤美鈴(右)さん

 

 

【京繍について】
刺繍は、もともと仏教とともに日本に伝来したといわれている。中でも京都の京繍には織部の司の流れがあって、技術力があり、職人の数も多いのが特徴だそうで、現在は伝統工芸品としても指定されている。昔は「縫い屋さん」と呼ばれていたそうで、海外へ貿易刺繍として盛んに輸出されていたそうだ。フランス刺繍と日本刺繍とで異なるのは、フランス刺繍は片手で縫うのに対して、日本刺繍は両手を使って繍うところ。また、フランス刺繍では木綿が主流だが、日本刺繍では絹糸を使用するとのこと。京繍のすばらしいところは?と、お尋ねすると、おふたりは「繊細で優雅なところ」だとおっしゃっていた。
 
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▲独特の技法を使って、とても丁寧に刺繍が施されている。
 
 
【京繍ができあがるまで】
刺繍は、着物などの最後の工程として施される。 下絵屋さんが描いた下絵を、シルクスクリーンというものを使って写しとる。次にパールバインダーという染料を載せることで、生地に下絵が写される。そして、その生地を刺繍台に張る。
 
 
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 ▲かつては筆を使って描いていたが、今ではシルクスクリーンで下絵を描くそうだ
 
 
糸選びは、たいてい業者から細かく指示されることはなく、職人さんのセンスに任せられる。 色は2000種類くらいあり、その中から使う糸を感覚的に選ぶ。「どの糸を使えばいいかは、糸の方から言ってくれます」という。また、世代や地域によって好まれる色、流行色があるため、そうしたことも考慮しながら色を決定する。

 

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▲2000種類の中から使う糸を感覚的に選ぶという

 

刺繍糸は、あらかじめより棒というものを使って両手で糸をねじり、「より」をかける。関東では、この「より」をかけないことが多いが、よりをかけるとより長持ちするのだという。また、よりのかけ方によって色の濃淡も調整できるのだ。
 
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▲より棒を使って糸をねじりあわせ、よりをかけている
 
針は、生産者が今では広島で1人しかいなくなってしまったという貴重なものを使う。使っているうちに、針の穴がだんだん広がっていき、最後には穴の輪っかが壊れて使えなくなるそうだ。
 
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▲こちらが使っている針。この針を作っている会社は、国内で1軒しかないそう。
 
 
基本となる繍い方は12種類。しかし、様々な繍い方があり、全部合わせると150種類くらい存在しており、また店ごとに独特の技法もあるのだという。最近までは、繍い方での分業もしていたそうで、地引縫いは地引縫いを専門にする職人さんがいて、こま縫いはこま縫いを専門とする職人さんがいたそうだ。同じ繍い方だけやっていると飽きてこないのか尋ねてみると、「飽きませんよ。なんで、ここのところ1針出てしまったんやろう、とか思うんです」という。また、昔の人の作品を見た時、糸がまるで機械のように等間隔で揃っていたそうで、「昔の人はそんなすごい技術を持っていた。そんなのを見ると、私たちはまだ全然だなと思います」という。職人として完璧を目指す姿勢が伺えた。
また、繍い方が150種類もあるが、練習はしないのか尋ねると、「練習なんてしません。いつも本番です。」とおっしゃっていた。
 
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▲後藤さんが刺繍の様子を実演してくださいました
 
 
【中村刺繍さんの新しい挑戦】
実は中村刺繍さん、気に入った色の糸が手に入らないと、自ら糸屋さんを始めてしまったそうだ。扱う糸は、なんと2000色。店によって好みが異なるため、最低でもこのくらいないと商売できないのだという。実際、着物1反縫うだけでも20、30色は使う。絹糸は、国産のもので、弾力性があり、糸がのびやすく、切れにくい「あけぼの」という蚕からとれる絹を使っている。とれる絹の量は少しだが、上質の絹が取れるのだそう。
 
 
 
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▲自分たちで糸屋さんまではじめたというから、すごい話である。
 
 
 
また、お知り合いの会社を通して、パリに日本の伝統工芸を持って行くという。価値をきちんと実感してもらえるよう、講釈を付けて売るのだそうだ。
京繍は、色彩や光沢が美しいのはもちろんのこと、目を凝らしてみると、技術の高さや表現の奥深さに魅了され、じっと見入ってしまう。数ミリという細部にまで徹底したものづくり精神の賜物だと思う。見れば見るほど、その価値に気付かされるのだ。この京繍の素晴らしさが、日本、そして世界に広まっていったらと感じた。
 
中村刺繍
住所:京都市上京区上立売通堀川東入堀之上町5番地
電話:075-431-1426 
メール:nakamura@nakamurashisyu.com
 
★ 中村刺繍さんでは、京都を中心に名古屋、西宮などで日本刺繍を体験できる刺繍教室も行っています。
 
 
 
 
【レポーター】   
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稲田有紀(いなだ ゆき)
京都の美大で古美術品の修復の勉強をしています。 マチレポを通して、京都のことをたくさん知りたいなと思っています。
 
 
 
 

 


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