上京ふれあいネット カミング

4年ぶりの復活、第7回能舞台フェスタin今宮御旅所

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およそ230年の歴史を誇る今宮神社御旅所の能舞台

上京区若宮横町にある今宮神社御旅所は、徳川家康の孫にあたる東福門院により1626年に寄進され、同時に能舞台も建立されました。御旅所は1788年の天明の大火で焼失してしまいましたが、1795年、能舞台も御旅所とともに再建されました。再建後から約230年、京都の社寺に存在する能舞台としては西本願寺に2つある能舞台に次いで3番目に古い能舞台です。そこでは当初から昭和まで「御旅能(おたびのう)」が行われてきました。ところが、理由は定かではありませんが、今から50年ほど前の昭和40年代には能が演じられなくなってしまったのです。

歴史ある能舞台を残したい〜能舞台フェスタin今宮御旅所の歩み2014-2022〜

2013年、今では「能舞台フェスタin今宮御旅所」実行委員会(以下、「実行委員会」という。)の会長を務める鳴橋明美さんが、カミングレポーターとして人間国宝・小鼓師の故曽和博朗(そわひろし)さんと孫の曽和鼓堂(そわこどう)さんを取材されました。その時、曽和博朗さんが御旅所にある能舞台で初舞台を踏んだことをお話されました。鳴橋会長は、その後今宮神社の宮司さんを訪ね、能舞台を見学し、「素晴らしい能舞台を残していきたい」「ここで能が演じられないのはもったいない」と思ったそうです。

御旅所に能舞台があり、かつて人々が集まり能を楽しんでいたことを多くの人に知ってもらいたいと、今宮神社や「西陣まちおこしの会」をはじめとする西陣地域の理解を得て、翌年(2014年)「西陣の朝市マルシェ」との同時開催で、1回目の能舞台フェスタin今宮御旅所(以下、「能舞台フェスタ」という。)を開催し、伝統芸能や踊りが披露されました。
こうして「カミング−上京ふれあいネット」での取材がきっかけとなって、能舞台フェスタが開かれるようになったのです。

2018年には能舞台が登録有形文化財に登録され、能舞台フェスタは2019年まで毎年今宮祭の時期に開催されました。2020年と2021年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大予防のために中止を余儀なくされましたが、2022年5月7日(土)、今宮祭で御旅所に渡られた神様の前で能と狂言を奉納しました。あえて広報せず、「地域の人・若い人たちの発表の場としての能舞台を復活したい」という願いを込めて、実行委員会と数名のボランティアが中心となって奉納を行いました。

みんなで作り上げた2023年の能舞台フェスタ

1年後に迎えた2023年5月6日(土)、第7回能舞台フェスタが開かれました。
当初、雨が降るとの天気予報に「なんとか天気が持ちますように」と願い続けた気持ちが通じたのか、能舞台フェスタの間は雨も降らず、時折日が射して暑いくらいの天気になりました。午前9時前には、立ち見が出るほどたくさんの人が舞台を観に来ていました。
鳴橋会長と原上京区長のあいさつから始まり、舞台お清めの神事に続いて、小鼓師の曽和鼓堂さんの小鼓が奉納されました。今宮神社の「やすらい祭」に縁のある謡曲「やすらい」が能楽部金剛会の学生によって謡われると、次々と高校生や大学生が能楽、狂言、邦楽、落語などの伝統芸能やよさこい踊りを披露しました。囃子に合わせて獅子が舞う六斎念仏踊りが会場を賑わせ、時にはサックスの音色が美しく響き渡り、最後はピアノとサックスによるクラシック音楽が奏でられて、全ての上演が終わりました。

「西陣の朝市マルシェ」のブースでは、できたての焼きそばや、唐揚げ、フライドポテト、みずみずしい果物、子どもたちに人気のかき氷、優しい甘さで飽きのこないクッキー、西陣ならではの和雑貨が並び、賑わいに貢献していました。

今年は、約20人のボランティアも運営を支えました。実行委員会や大学からの声かけ、インターネットでの案内を通じて「家族でボランティア活動をしてみたかった」「ゴールデンウィークで時間があったから」「楽しそうだったから」と様々な動機で参加したボランティアの人たちが、テントや長机、椅子の搬入、受付、自転車駐輪場への交通誘導、能舞台の裏方として活躍しました。

能舞台清掃を通じて人の輪ができ、人と知り合う機会に

実行委員会では、2022年から月に一度能舞台のお掃除をしています。床の土埃を払い、雑巾がけをしながら、鏡板に描かれている老松や竹の絵を見て、立派な格天井(ごうてんじょう)を見上げ、床を拭くうちに、能狂言のことを詳しく知らなくても自然に興味が湧いてくるのだそうです。何より、舞台を掃除することによって心も磨かれるような気持ちになるのは、やはりここが今宮神社の御旅所だからかもしれません。みなさんも清掃活動に参加して、地域の宝に触れてみませんか。

「能舞台フェスタin今宮御旅所」実行委員会

Eメール:imamiya.otabi.noubutai@gmail.com 清掃活動への参加申込・問い合わせは上記まで

<参考記事>

1)小鼓を極めることと能楽の楽しみ 〜曽和博朗(そわひろし)さんを訪ねて〜
http://kamigyo.sakura.ne.jp/tokushu/zukan/post-26.html

2)西陣の守り神・今宮神社 今宮祭によせる宮司の熱き想いを聞く -それは御旅所に眠る秘密の宝物から始まった-
<1>http://kamigyo.sakura.ne.jp/tokushu/spot/post-83.html
<2>http://kamigyo.sakura.ne.jp/tokushu/spot/post-88.html
<3>http://kamigyo.sakura.ne.jp/tokushu/spot/post-89.html

3)能舞台フェスタレポート ~地域の宝がこの日、復活をした!~
http://kamigyo.sakura.ne.jp/tokushu/event-report/post-125.html

4)「第二回 能舞台フェスタ in 今宮御旅所」レポート ~ 国際的な視点と可能性 ~
http://kamigyo.sakura.ne.jp/tokushu/event-report/-in-1.html

レポーター

亀村佳都
まちづくりアドバイザー
今年初め、子ども向けの「おやこ狂言会」に行き、心から楽しそうに、声を出して笑う子どもたちの姿に感動しました。演者と観客が楽しさを分かち合っていたからです。
能舞台フェスタでは、今宮祭に触れ、伝統芸能に親しみながら、西陣の朝市ブースを巡り、ご近所さんに会えばおしゃべりをするという、年中行事や伝統文化と地域での暮らしが 上手に溶け合っていて素晴らしかったです。

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